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中国語 了・着・过の使い分け|比較表と例文

更新: 中村 大輝
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中国語 了・着・过の使い分け|比較表と例文

中国語の「了・着・过」は、日本語ではどれも過去や「〜ている」に見えても、実際には時制ではなくアスペクトとして分けて考えると一気に整理できます。筆者も中国赴任の初期に「我开会着」と言って相手に首をかしげられ、「着」と「在/正在」の違いは会話の通じ方を左右すると身をもって知りました。

中国語の「了・着・过」は、日本語ではどれも過去や「〜ている」に見えても、実際には時制ではなくアスペクトとして分けて考えると一気に整理できます。
筆者も中国赴任の初期に「我开会着」と言って相手に首をかしげられ、「着」と「在/正在」の違いは会話の通じ方を左右すると身をもって知りました。
この記事は、学習の目安として主に中級手前を想定した学習者向けに書いています(参考目安としてHSK3〜4程度を想定することが多い)が、HSKの級別扱いは参考書や教材で差が出る点に留意してください。
3つの助詞の意味の核、置き場所、否定形、日本語とのズレを比較し、会話と作文で迷わず選べるよう整理しています。
TUFSの中国語文法でも、動詞の局面をどう切り取るかがポイントだと整理されている通り、了は完了・実現、着は状態の持続、过は経験の有無として押さえるのが実戦向きです。
例文はピンイン、簡体字、日本語訳をセットで示すので、読んだあとにそのまま口に出して確認できます。

中国語の了・着・过とは?まずは時制ではなくアスペクトだと理解する

中国語の「了・着・过」を理解する入口は、時制ではなくアスペクトを見ることです。
アスペクトとは、動作を時間軸のどこに置くかではなく、その動作のどの局面を見るかを示す文法要素だと考えると腑に落ちます。
始まりを見るのか、進行中を見るのか、終わった結果を見るのか、あるいは経験として持っているかを見るのか。
この視点に切り替わると、3つの助詞の役割が一気に分かれてきます。

中国語は日本語や英語のように動詞そのものを活用させて時制を細かく曲げる言語ではありません。
動詞の形は大きく変えず、助詞の「了・着・过」や、副詞の「在/正在」「已经」「还没」を組み合わせて、動作の進行、完了、未完了、経験の有無を表していきます。
つまり、見るべきポイントは「いつか」だけではなく、「どういう状態として捉えるか」です。

ここで最初に外しておきたい思い込みが、「了=過去形」という理解です。
たしかに日本語に訳すと「〜した」になりやすいので、初学者はそう覚えがちです。
筆者も独学の初期はそう処理していました。
ただ、実際には「了」は動作の実現や完了を示すもので、過去そのものと一対一では結びつきません。
変化が起きて今そうなっていることを表す場面でも出ますし、文脈によっては先の予定が完了するイメージを含むこともあります。
しかも、動詞の直後につくアスペクト助詞の「了」と、文末に置かれる語気助詞の「了」は別物です。
この区別が曖昧なままだと、読めても書けない状態が続きます。

一方で、「着」は状態の持続に目を向ける助詞です。
日本語では「〜ている」と訳されることが多いものの、常に進行中の動作を言うわけではありません。
たとえば「ドアが開いている」は、開ける動作の最中ではなく、開いた状態が続いていることに注目しています。
この感覚が「着」です。
進行そのものを言いたいなら「在/正在」が前に出ることが多く、同じ「〜ている」でも焦点が違います。

「过」は、初心者の段階では経験に絞って捉えると整理しやすくなります。
つまり、「〜したことがある」です。
1回の出来事を報告するというより、その体験が自分の履歴に入っているかを見る助詞だと考えるとぶれません。
旅行、仕事、学習歴などを話すときに頻出します。

筆者が中国の職場でこの違いの価値を強く感じたのは、会議の進捗報告でした。
ある作業が終わっているなら「做完了」で十分ですし、いま対応中なら「正在做」、過去に担当した経験があるなら「做过」と言い分けるだけで、相手が欲しい情報が一瞬で伝わります。
日本語だと「やりました」「やっています」「やったことがあります」が文脈頼みになる場面でも、中国語はアスペクトを選ぶだけで、完了なのか進行中なのか経験なのかが明確になります。
文法事項に見えて、実務では情報整理の道具そのものだと感じました。

学習上の目安として、多くの学習参考書や指導では中級手前(HSK3〜4程度)で扱われることが多い項目です。
ただし、HSK の級別対応は参考書や公式資料で差があるため、試験対策を行う際は公式シラバス等の確認を併せて行ってください。

了・着・过の違いがひと目でわかる比較表

比較表

迷ったときは、まず「その文で何を見せたいのか」を固定すると整理できます。
出来事が成立したことを見るなら「了」、その状態が続いていることを見るなら「着」、経験があるかどうかを言うなら「过」です。
日本語ではどれも「〜た」「〜ている」に寄りやすいので、訳ではなく焦点で見分けるのがコツです。

項目
意味の核動作の実現・完了状態の持続・付帯状況経験の有無
基本位置動詞の直後。基本は「動詞+了+目的語」動詞の直後。「動詞+着」動詞の直後。「動詞+过」
日本語の訳目安〜した、〜してしまった〜ている、〜したまま〜したことがある
否定形没(有)+動詞
※「了」は消える
没(有)+動詞+着没(有)+動詞+过
使える文脈いま動作が成立した、終わった、実現したと言いたいときドアが開いている、服を着ているなど、結果の状態が続くとき。付帯状況も可旅行、仕事、食事などの「経験がある/ない」を言うとき
使えない文脈単に過去っぽいからという理由だけでは置けない。文末の語気助詞「了」とも別物単純な進行動作全般には使えない。「今まさに〜している」は「在/正在」が合う場面が多い1回きりの完了報告をそのまま言いたい場面。経験ではなく出来事の成立を言うなら「了」
代表例文wǒ mǎi le yì běn shū.
我买了一本书。
本を1冊買いました。
mén kāi zhe.
门开着。
ドアが開いています。
wǒ qù guo Běijīng.
我去过北京。
北京に行ったことがあります。

表で見ると単純ですが、実際に会話へ持ち込むと差がはっきり出ます。
商談まわりの中国語を整理していたとき、筆者は「签了合同」「合同签着」「签过很多合同」を並べてメモしていました。
「签了合同」は契約締結が成立した話で、「合同签着」は文として独立で使うより「签着字」など状態や付帯状況を表す発想に近く、「签过很多合同」は契約を何度も扱った経験です。
同じ「サインした」に見えても、見ている面が別だとわかると、助詞選びが感覚ではなく構造で決まります。

一文三変換でズレを体感

日本語からそのまま置き換えると、いちばん混乱するのがここです。同じ「北京に行った」でも、中国語では何を伝えたいかで形が変わります。

まず、行った経験があると言いたいなら「过」です。

  • wǒ qù guo Běijīng.

我去过北京。 北京に行ったことがあります。

ここでの中心は「北京へ行く」という出来事そのものではなく、その経験を持っているかどうかです。旅行歴、出張歴、訪問経験を話す場面ならこの形が自然です。

次に、北京へ行くことが実際に成立したと述べるなら「了」です。

  • wǒ qù le Běijīng.

我去了北京。 北京へ行きました。

これは出来事の成立に焦点があります。
経験談というより、「実際に行った」という事実報告です。
TUFS 中国語文法 アスペクト助詞の了でも、動詞直後の「了」は動作の実現・完了を見る助詞として整理されています。

一方で、「北京に行っていて今も滞在中」のような意味を、単純に「去着」で作るわけではありません。
ここが日本語話者が引っかかるところです。
着は状態の持続を見る助詞なので、移動動詞をそのまま「行っている」にする発想とはずれます。
北京に滞在中なら、たとえば次のように状態を言い換えます。

  • wǒ zài Běijīng ne.

我在北京呢。 北京にいます。

このずれをつかむと、「日本語の一文を中国語で三通りに切り分ける」感覚が育ちます。
経験なら「过」、成立した事実なら「了」、場所にいる状態を言うなら「着」ではなく別の表現を立てる、ということです。
着を何にでも「〜ている」と当てはめると、「我开会着」のような不自然な文が出やすくなります。
学習の現場でも、この誤りは「訳は近いのに通じ方がずれる」典型例としてよく残ります。

ミニ判断フロー

迷った瞬間は、文を長く考えるより、次の3段階で切ると答えが見えます。

  1. いま言いたいのは、結果や出来事が成立したことか

その場合は「了」です。 例:wǒ chī le.
我吃了。
食べました。

  1. 言いたいのは、ある状態が続いていることか

その場合は「着」です。 例:tā chuān zhe hēi yīfu.
他穿着黑衣服。
彼は黒い服を着ています。

  1. 言いたいのは、経験があるかないかか

その場合は「过」です。 例:wǒ méi qù guo Běijīng.
我没去过北京。
北京に行ったことがありません。

ℹ️ Note

日本語の「〜た」「〜ている」を見たら、そのまま訳語で決めず、「成立」「持続」「経験」のどれを話しているかに先に印を付けると、助詞の候補はほぼ一つに絞れます。

この3本柱が頭に入ると、戻る場所ができます。
文法事項を細かく覚える前でも、「終わった話なのか」「状態の話なのか」「経験の話なのか」を切り分けるだけで、誤用の多くは防げます。

了の使い方|動作の完了と文末の了は別物

アスペクト助詞の了

いちばん先に切り分けたいのは、動詞のすぐ後ろに置く「了」です。
これはアスペクト助詞で、動作が実現したこと、一区切りついたことを表します。
代表例は 我买了一本书。
です。
この文で話し手が示しているのは、「買う」という行為が成立したという事実です。

ここで見落としやすいのが、「了=過去形」ではないという点です。
TUFS 中国語文法 アスペクト助詞の了でも、動詞直後の「了」は時制そのものより、動作の実現を見る助詞として整理されています。
日本語の「〜した」に近く見えても、機械的に過去と結びつけると崩れます。

たとえば 我买了一本书。
は自然ですが、我买了书。
とすると初級段階では引っかかりやすい文になります。
動詞の後ろにアスペクト助詞の「了」を置くときは、そのあとに来る目的語の形まで含めて考える必要があるからです。

語気助詞の了

もう一つの「了」は、文末に置く語気助詞です。
こちらは動作の完了そのものより、状況が変わったこと、新しい事態として提示することに重点があります。
典型例が 我买书了。
です。

この文は「本を買った」という出来事も含みますが、焦点は「買うという状況になった」「その件はいま報告する内容だ」という会話上の更新にあります。
動詞直後の「了」と同じ字なので混同されますが、役割は別です。
アスペクト助詞了と語気助詞了の違いで整理されている通り、前者は動作の成立、後者は文全体の状況変化を見ると把握するとずれにくくなります。

筆者が中国で仕事をしていたときも、この差は社内チャットで何度も意識しました。
送信の事実を端的に記録したい場面では 发了邮件 の感覚で言い、相手に「いま送ったので見てください」という更新情報として伝える場面では 发邮件了 の感覚を使っていました。
同じ「メールを送った」でも、前者は行為の成立、後者はいま共有すべき新状況です。
この違いがわかると、会話の温度が揃います。

文終止の条件と目的語の具体性

「了」の誤用で多いのが、動詞+了+裸名詞をそのまま文末に置いてしまう形です。
たとえば 我买了书。
は、文法書でもしばしば不安定な例として扱われます。
裸名詞の が抽象的で、何をどれだけ買ったのかが見えにくいため、文がそこで閉じにくいからです。

そこで自然な形にする方法は2つあります。
ひとつは、目的語を具体化することです。
我买了一本书。
のように量詞を入れると、出来事がきれいに着地します。
もうひとつは、文末に語気助詞の「了」を置いて、状況変化として文を終えることです。
我买书了。
なら、「本を買うことになった/買った」という新情報の提示になります。

この3文を並べると差が見えます。

  1. 我买了一本书。

本を1冊買いました。 動作の成立を具体的に述べています。

  1. 我买书了。

本を買いましたよ。 新しい状況として相手に伝えています。

  1. 我买了书。

初学者がそのまま使うと収まりが悪くなりやすい形です。

学習の現場では、「誤:我买了书。
正:我买了一本书。
/我买书了。
」という直し方が、そのまま実用になります。
ポイントは、「了」だけを見るのではなく、後ろの目的語が具体的か、文末で新情報提示になっているかまで一緒に判定することです。

二重了:住了一年了 の仕組み

我住了一年了。
のように「了」が2回出る形も、構造がわかると怖くありません。
前の「了」はアスペクト助詞で、住了一年 というまとまりを作っています。
後ろの「了」は文末の語気助詞で、その状態がいまの時点まで続き、ちょうど一年という段階になったことを示します。

つまり、これは単純な「住んだ」ではなく、継続してきた期間が現在の時点で一年に達したという言い方です。
動作の完了を二重に言っているわけではありません。
前の「了」は期間表現を伴った出来事の成立、後ろの「了」は現在に結びつく状況変化です。

たとえば 我学了一年中文了。
も同じ仕組みです。
「中国語学習が一年続いて、いまその節目にある」という意味になります。
日本語では「1年勉強しています」に近く見えても、中国語では二つの「了」が別の仕事をしています。

否定・疑問・例文集

否定では、動詞直後のアスペクト助詞「了」は残りません。
基本は 没(有)+動詞 です。
したがって 我没买书。
が自然な否定です。
「買わなかった」「買っていない」という否定を言うときに 我没买了书 のようにはしません。

比較すると、次の3文は役割がきれいに分かれます。

  • 我买了一本书。

買う行為が成立し、その内容も具体的です。

  • 我买书了。

本を買った、という新状況を相手に知らせています。

  • 我没买书。

そもそも買っていない、という否定です。

疑問文でも、「どちらの了か」で狙いが変わります。
你买书了吗? なら「本、もう買ったの?」という状況確認ですし、你买了一本书吗? なら「1冊買ったの?」と、成立した内容を具体的にたずねています。

ℹ️ Note

「了」が見えたら、まず動詞の直後か文末かを確認すると、誤りの大半はその場で切り分けられます。動詞の後ろなら動作の成立、文末なら新状況の提示という軸で見ると、我买了一本书我买书了 の差がぶれません。

着の使い方|〜しているでも進行ではなく状態の持続が中心

結果状態

「着」の核は、動作そのものの進行ではなく、その結果として残っている状態です。
日本語の「〜ている」をそのまま重ねるとずれます。
たとえば 门开着。
は「ドアが開いている」ですが、感覚としては「開けるという変化が起き、その開いた状態が続いている」に近いです。
他站着。
なら「立っている」、墙上挂着一张照片。
なら「壁に写真が掛かっている」で、どれも姿勢・配置・結果状態に焦点があります。

ここで頭の中を三つに分けると混乱が減ります。
進行は在/正在、状態の持続は着、出来事の成立は了です。
日本語ではどれも「〜している」「〜した」と訳せる場面がありますが、中国語では見ている断面が違います。
TUFS 中国語文法 持続を表す着でも、この「着」は持続状態を見る助詞として整理されています。

筆者がこの感覚を腹落ちさせたのは、中国の現場で安全掲示の 请戴着安全帽 を見たときでした。
最初は「ヘルメットを着用している」という日本語訳だけで捉えていたのですが、実際には「今その場でかぶる動作をしろ」というより、かぶった状態を保ったままでいてくださいという指示だと気づいて、着の役割が一気につながりました。

連動:V1+着+V2

もう一つ頻出なのが、V1+着+V2 の形です。
これは「V1した状態でV2する」「V1を保ちながらV2する」という付帯状況を表します。
たとえば 她戴着口罩说话。
は「彼女はマスクをつけた状態で話す」、他站着看书。
は「彼は立ったまま本を読む」です。
中心は後ろの動作で、前の V1+着 がそのときの姿勢や装着状態を添えています。

この形は、日本語の「〜しながら」と機械的に置き換えるより、第2動作がどんな状態のもとで行われるかを見るとつかみやすくなります。
拿着手机开会 なら「スマホを持ったまま会議をする」、开着灯工作 なら「電気をつけた状態で仕事をする」です。
どちらも、前半は主たる出来事ではなく、後半を支える背景です。

存在文での着

「着」は存在文でもよく使われます。
典型例は 桌子上放着一本书。
で、「机の上に本が1冊置いてある」という意味です。
ここでも注目点は「置く動作」ではなく、置かれた結果としてその場に存在している状態です。
墙上贴着通知。
なら「壁にお知らせが貼ってある」、门口停着一辆车。
なら「入口に車が止まっている」となります。

この用法では、場所を先に出して、その場所に何がどういう状態であるかを述べる流れが自然です。
日本語だと「ある」に引っぱられますが、中国語では 放着、挂着、贴着、停着 のように、存在のしかたまで動詞で描くのが判断材料になります。
単に物が存在するだけでなく、どのように置かれ、掛けられ、停められているかまで一緒に見せています。

否定・疑問の作り方

「着」の否定は、前のセクションの「了」と違って、没(有)+動詞+着 の形を取ります。
否定になっても 着は消えません
たとえば 门没开着。
は「ドアは開いた状態になっていない」、他没站着。
は「彼は立っていない」です。
ここでの否定対象は進行中の行為ではなく、あくまでその状態です。

疑問も同じ軸で考えると自然です。
门开着吗? は「ドア、開いていますか」、他戴着眼镜吗? は「彼は眼鏡をかけていますか」です。
聞いているのは「今その状態かどうか」であって、「今まさに開けているか」「今まさに眼鏡をかける動作中か」ではありません。
日本語の「〜ている」が広すぎるので見えにくいのですが、中国語ではここがきれいに分かれます。

⚠️ Warning

学習中に迷ったら、「いま見えているのは動作の途中か、結果として残っている状態か」を先に判定すると、在/正在と着の取り違えが減ります。

在/正在との違いと不自然例

「着」と 在/正在 は、どちらも日本語にすると「〜している」になり得ますが、焦点が違います。
他在打篮球。
は「彼は今バスケットボールをしている」で、ボールを打つ・プレーするという進行中の動作を見ています。
これに対して **\*他打着篮球。
** は、単純に「今プレー中です」と言いたいだけなら不自然です。
打篮球 はもともと行為の進行を述べる動詞句なので、ここで必要なのは状態の持続ではなく進行マーカーだからです。

「着」が自然になるのは、結果状態や付帯状況が立つときです。
たとえば 他拿着篮球说话。
なら「彼はバスケットボールを持ったまま話している」で自然ですし、他穿着运动服打篮球。
なら「運動着を着た状態でバスケをしている」と言えます。
着が支えるのは背景状態であって、単純な進行そのものではありません。

この違いを図式化すると、初学者の混乱がほどけます。
进行=在/正在+動詞、状態=動詞+着、出来事の成立=動詞+了 です。
日本語では全部「〜ている」「〜た」で見えてしまうため、最初のうちは 门开着他在打篮球 を対にして覚えると、着を進行マーカーとして誤用する場面が減ります。

过の使い方|したことがあるを表す経験用法

経験の核と語順

「过」の中心は、ある時点より前に、その行為を経験したことがあるかを述べることです。
ここで見ているのは「いつ行ったか」「その1回がもう終わったか」ではなく、経験の有無そのものです。
形はシンプルで、動詞+过 が基本になります。
たとえば 我去过北京。
は「北京に行ったことがある」で、具体的な日付を報告しているのではなく、北京訪問の経験を持っていることを伝えています。

この感覚は、仕事の自己紹介や出張履歴の共有で特によく出ます。
筆者は現地で移動歴を簡潔に伝える場面で 我来过大阪三次。
と言ったことがありますが、これだと単発の訪問報告ではなく、「大阪に来た経験が積み上がっている」という厚みまで一息で伝わりました。
去过两次去过很多次 のように回数を添えると、経験の量もそのまま表せます。
例文で並べると、我吃过北京烤鸭。
(北京ダックを食べたことがある)、他看过这部电影。
(彼はこの映画を見たことがある)のように使います。

本稿では初中級者がまず押さえるべき経験用法に絞ります。
なお、学術的な文法解説では が文脈によって完了や終結的意味を帯びることが指摘される場合もあります。
本稿は初心者向けの整理に限定して説明している旨を注記します。

本稿は初中級者がまず押さえるべき「経験用法」に焦点を当てて説明します。
なお、学術的な文法解説では、特定の文脈で「过」が完了・終結の意味を帯びると指摘されることもあります。
中級以上の詳細な用法や例外については学術書や専門解説を参照するよう注記します。

从来+没…过 の強否定

経験の否定を一段強く言うときに相性がいいのが 从来 です。
从来没/没有+動詞+过 で、「これまで一度も〜したことがない」という強い否定になります。
たとえば 我从来没喝过咖啡。
は「私はこれまで一度もコーヒーを飲んだことがない」、他从来没有坐过飞机。
は「彼は一度も飛行機に乗ったことがない」です。

この 从来 が入ると、単なる否定よりも「履歴をさかのぼってもゼロ」という響きが出ます。
会話では 我没看过 でも通じますが、我从来没看过 になると、未経験であることがぐっと明確になります。
旅行、食事、仕事経験など、過去の蓄積を話題にするときほど、この形の輪郭がはっきり見えます。

ℹ️ Note

「过」を見たら、まず「その一回の完了」ではなく「履歴に入っているか」を考えると、了との取り違えが減ります。

了とのコントラスト例文

「过」と「了」が混同される最大の理由は、どちらも日本語では過去っぽく訳されるからです。
ただし、中国語で見ているものは別です。
过=経験の有無了=具体の出来事の成立・完了 と置くと整理できます。
たとえば 我见过他。
は「彼に会ったことがある」で、過去のどこかで接触経験があることを述べています。
これに対して 我见了他。
は「彼に会った」「今しがた会ってきた」で、その一回の出来事が実現したことを言っています。

同じように、我去过北京。
は北京訪問の経験を持っているという話で、我去了北京。
は北京に行ったという具体の出来事です。
前者は履歴書のように経験欄を見る感覚、後者は行動記録を見る感覚と言うとつかみやすくなります。
ビジネスの現場でも、経歴紹介で 我负责过这个项目。
と言えば「その案件を担当した経験がある」、その日の進捗報告で 我负责了这个项目。
と言えば文脈次第で「その案件を担当した」という出来事寄りの報告になります。

ここが見えると、「1回終わったから过」とはならない理由もはっきりします。
終わった一回を言いたいなら「了」、その種の経験を持っていると言いたいなら「过」です。
日本語訳に引っぱられず、何を報告したい文なのかを先に決めると、助詞の選択がぶれません。

日本人が間違えやすい5パターン

ここは、知識として理解したつもりでも作文で落としやすいところです。
筆者も中国赴任の初期とHSK対策の時期に、同じ所で何度もつまずきました。
整理すると、つまずき方にはある程度パターンがあります。
誤文をそのまま覚えてしまう前に、どこを見誤っているのかまでセットで押さえると、会話でも試験でも修正が効くようになります。

  1. 了=過去形と思ってしまう

誤文は 明天我看完了这本书。 míngtiān wǒ kàn wán le zhè běn shū. 明日、私はこの本を読み終えた。

正文は 明天我就能看完这本书了。
míngtiān wǒ jiù néng kàn wán zhè běn shū le. 明日にはこの本を読み終えられそうです。

理由は、了は単純な過去そのものではなく、動作の実現や完了を示す標識だからです。
未来の文脈でも、「その時点までに達成される」という見方なら現れます。
前述の通り、時制で機械的に当てはめるとここで崩れます。
日本語の「〜した」に引っぱられると、過去でなければ使えないように見えますが、中国語では「完了した状態に到達する」という見方が先にあります。

  1. 着=進行形と思ってしまう

誤文は 他打着篮球。 tā dǎ zhe lánqiú. 彼はバスケットボールをしています。

正文は 他在打篮球。 tā zài dǎ lánqiú. 彼は今バスケットボールをしています。

対比として、他拿着篮球。 tā ná zhe lánqiú. 彼はバスケットボールを持っています。 は自然です。

理由は、着が表す中心は動作そのものの進行ではなく、結果として続いている状態だからです。
今プレー中と言いたいなら、進行を表す 在/正在+動詞 が軸になります。
TUFSの中国語文法解説でも、着は持続状態、在は進行という切り分けで説明されています。
日本語ではどちらも「〜している」と訳せるため、訳語だけで判断すると混同が起こります。

  1. 过を単純過去に使ってしまう

誤文は 我昨天去过北京。 wǒ zuótiān qù guo Běijīng. 私は昨日北京に行ったことがある。

正文は 我昨天去了北京。 wǒ zuótiān qù le Běijīng. 私は昨日北京へ行きました。

経験を言うなら 我去过北京。 wǒ qù guo Běijīng. 私は北京に行ったことがあります。

理由は、过は経験の有無を見る助詞で、特定の一点を切り出す単純過去とは相性が弱いからです。
昨天 のように時点を限定すると、「その日に出来事が起きた」と言いたくなるので、ここでは が合います。
筆者はHSK4級直前の問題演習で、この 昨天+过 を繰り返し誤答していました。
そこで「日付が出たらまず经验ではなく出来事を見る」と学習ログに書いてから、選択問題と並べ替えの正答がぶれなくなりました。
点が安定したきっかけの一つは、この修正でした。

  1. 否定形で助詞の扱いを間違える

誤文は 我没买了书。 wǒ méi mǎi le shū. 私は本を買わなかった。

正文は 我没买书。 wǒ méi mǎi shū. 私は本を買いませんでした。

誤文は 门没开。
mén méi kāi. ドアは開いていない。
この文自体は文脈によって成り立ちますが、「開いたままではない」という状態の持続を言いたいなら不足します。

正文は 门没开着。 mén méi kāi zhe. ドアは開いたままではありません。

誤文は 我没去北京。
wǒ méi qù Běijīng. 私は北京に行っていない。
これも「北京へ行かなかった」という出来事否定なら正しいですが、「行ったことがない」と言いたいなら別です。

正文は 我没去过北京。 wǒ méi qù guo Běijīng. 私は北京に行ったことがありません。

理由は、了は否定で消え、着と过は没(有)で否定しても残るからです。
ここを一つの規則として覚えると、作文で止まりません。
完了した出来事の否定は 没+動詞、持続状態の否定は 没+動詞+着、経験の否定は 没(有)+動詞+过 です。
日本語だと全部「〜していない」で済んでしまうため、助詞まで消してしまう誤りが起きます。

  1. 了の位置を間違える

誤文は 我买书了一本。 wǒ mǎi shū le yì běn. 私は本を一冊買いました。

正文は 我买了一本书。 wǒ mǎi le yì běn shū. 私は本を1冊買いました。

もう一つ混同しやすいのが、我买书了。 wǒ mǎi shū le. 私は本を買うことになった/本を買ったよ。 と、我买了一本书。 の違いです。

後者は、動詞+了+数量つき目的語 で、何をどれだけ買ったかが文の中で具体化されています。
前者の 文末了 は、出来事の発生や状況の更新を述べる語気が前に出ます。
しかも が裸名詞のままだと、「本を買った」という情報は出せても、「どの本を何冊買ったか」は立ちません。
ここで動詞直後の了と文末の了を混ぜると、語順が崩れます。

動詞後の了と文末の了は別物として整理されています。
初学者の段階では、数量詞つきの具体目的語があるなら「买了一本书」型、文全体の変化や報告なら「买书了」型 と分けておくと、文の骨組みが安定します。

ℹ️ Note

迷ったときは「その文で言いたいのは、出来事の成立、続いている状態、経験の有無のどれか」を先に決めると、了・着・过の候補が自然に絞れます。

練習問題でチェック|了・着・过を選び分ける

ここでは、読んでわかったつもりを実際に選べる状態へ進めます。
ポイントは3つあります。
文が言いたいのは、出来事の成立なのか、続いている状態なのか、それとも経験なのか。
その軸を先に決めると、選択肢が急に狭まります。
筆者は問題演習で迷った設問だけを残し、日本語から中国語へ3回音読して暗唱する形で復習していました。
とくに助詞の位置と否定は、目で理解するだけでは定着しにくく、口に出した反復で崩れにくくなります。

TUFSの中国語文法解説では、着は状態の持続、在/正在は進行として整理されています。
日本語訳がどちらも「〜している」になりやすいので、問題で切り分けておくと会話でも作文でも迷いが減ります。

練習問題

1. 空所補充 我昨天___做完作业。 a. 了 b. 着 c. 过

答え:a. 了 中国語:我昨天做完了作业。 ピンイン:wǒ zuótiān zuòwán le zuòyè. 日本語訳:私は昨日、宿題をやり終えました。

解説: ここは「宿題を終えた」という出来事の完了を言っています。
したがって が合います。
は「やり終えたまま」という状態にはならないので不自然です。
は「やり終えたことがある」という経験になってしまい、昨天 のような具体的な時点と合いません。

2. 空所補充 门开___,别关。 a. 了 b. 着 c. 过

答え:b. 着 中国語:门开,别关。 ピンイン:mén kāi zhe, bié guān. 日本語訳:ドアは開いているから、閉めないで。

解説: ドアが「開いたあと、その状態が続いている」と言いたい文です。
だから を使います。
にすると「開いた」という変化の発生に焦点が移り、状態描写としては弱くなります。
は経験助詞なので、「ドアが開いたことがある」という意味になってしまい成立しません。

3. 空所補充 我___去过上海,两次。 a. 了 b. 着 c. 过

答え:c. 过 中国語:我去过上海,两次。
ピンイン:wǒ qù guo Shànghǎi, liǎng cì. 日本語訳:私は上海に行ったことがあり、2回あります。

解説: 回数を添えて「経験」を述べているので です。
は1回の出来事の成立を言う方向に傾き、「行ったことがある」という蓄積の意味が出ません。
は状態持続なので、移動動詞のこの文脈では合いません。

4. 空所補充 我没___看见他。 a. 了 b. 着 c. 过

答え:どれも入れない 中国語:我没看见他。 ピンイン:wǒ méi kànjian tā. 日本語訳:私は彼を見かけませんでした。

解説: これは否定の完了文です。
前述の通り、 は否定で消えます。
したがって 没+動詞 の形になります。
を入れると「見えている状態」になり意味がずれます。
を入れると「見たことがない」という経験否定に変わり、その場で見えなかったという文とは別になります。

5. 和文中訳 彼は今、テレビを見ています。

答え:他看电视。 ピンイン:tā zài kàn diànshì. 日本語訳:彼は今テレビを見ています。

解説: この問題は、あえて 了・着・过 を選ばないタイプです。
焦点は「今進行中の動作」なので、 が最も自然です。
にして 他看着电视 とすると、「テレビのほうを見ている状態」に寄り、文脈次第では成り立つものの、一般的な「テレビを視聴している」の基本文としては 在看电视 のほうが明確です。
は完了、 は経験なのでどちらも不適切です。

6. 和文中訳 彼は手に1本のペンを持っています。

答え:他拿一支笔。 ピンイン:tā ná zhe yì zhī bǐ. 日本語訳:彼は1本のペンを持っています。

解説: 「持っている」は結果として続いている状態なので です。
にすると「持った」という動作の成立になり、今の状態描写からずれます。
は「持ったことがある」となり、日常的な状態文では意味が合いません。

7. 空所補充 我从来没___吃过这个菜。 a. 了 b. 着 c. 过

答え:c. 过 中国語:我从来没吃过这个菜。
ピンイン:wǒ cónglái méi chī guo zhège cài. 日本語訳:私はこの料理を一度も食べたことがありません。

解説从来 があるので、「これまで一度も〜ない」という経験の否定です。
したがって が必要です。
は否定で残りませんし、ここで言いたいのも完了ではありません。
は状態持続で、料理を食べる経験の有無とは結びつきません。

8. 和文中訳 私は昨日北京へ行きました。

答え:我昨天去北京。 ピンイン:wǒ zuótiān qù le Běijīng. 日本語訳:私は昨日北京へ行きました。

解説昨天 があるので、具体的な一点の出来事を述べています。
ここでは が自然です。
にすると「昨日、北京に行ったことがある」となり、時点と経験がぶつかります。
は状態持続なので移動の完了報告には使えません。

9. 和文中訳

答え:我去北京。 ピンイン:wǒ qù guo Běijīng. 日本語訳:私は北京に行ったことがあります。

解説:これは「経験の有無」を述べる文です。
時点を特定する語(例:昨天)が入らないため、単発の出来事の報告というより「これまでの履歴として経験があるか」を示す が適切です。
答え:我去北京。
ピンイン:wǒ qù guo Běijīng. 日本語訳:私は北京に行ったことがあります。

解説: こちらは反対に、時点ではなく経験の有無を言う文です。
だから を使います。
にすると「行った」という単発の出来事報告に寄り、「ことがある」の意味が消えます。
はもちろん状態を表すので不適切です。
8番と9番をセットで比べると、昨天があるか、経験を言いたいかで判断できるようになります。

10. 空所補充 我们___见___面了。 a. 了 / 了 b. 着 / 着 c. 过 / 过

答え:a. 了 / 了 中国語:我们见了面了ピンイン:wǒmen jiàn le miàn le. 日本語訳:私たちは会いました。

解説: この文は少し上級者向けですが、動詞直後の了文末の了 が重なる形です。
前の は「会うという出来事の成立」、文末の は状況の更新や報告の語気を添えています。
着 / 着 にすると「会っているまま」という意味にならず不自然です。
过 / 过 では「会ったことがある」になり、文末の語気ともかみ合いません。
ここで二種類の を見分けられると、作文の精度が一段上がります。

⚠️ Warning

間違えた問題だけを抜き出して、日本語から中国語へ3回ずつ音読すると、没看见他门开着去过北京 のような型が口から自然に出るようになります。筆者はこの方法で、助詞そのものより「どこに置くか」「否定で消えるか残るか」を体に入れました。

仕上げの見分け方

問題を解くときは、まず日本語をそのまま中国語に置き換えようとせず、文の中心を見ます。
「終わった・実現した」なら
「その状態のまま」なら
「したことがある/ない」なら です。

この3本だけで判断すると、選択肢がきれいに整理されます。特に 昨天从来没 のような語が見えたら、どのアスペクトを求めているかがほぼ見えてきます。

まとめ|迷ったら完了・持続・経験の3語で判断する

迷ったら、日本語の「〜ている」を当てるのではなく、まず 完了・持続・経験 の3語に置き換えて判断してください。
は出来事の成立、门开着 のような結果状態や、拿着手机说话 のような 動詞1+着+動詞2 の付帯状況、 は経験の有無です。
存在文でも状態を置く発想が効きますし、否定は を残さず、着・过没(有) と一緒に残す、と体で覚えると崩れません。
在/正在 は進行、 は持続なので、他打着篮球 のように何でも「〜ている」で処理すると不自然さが出ます。

筆者は商談メモをこの3軸で色分けしてから、中国語の即時作文で助詞の迷いが減りました。
比較表を印刷かスクショして、会話前に「完了・持続・経験」だけ暗唱し、短い例文の音読とミニ日記で 了・着・过 を毎日1回ずつ使ってみてください。
次は語気助詞の 在/正在、結果補語までつなげると、実際の会話運用が一段なめらかになります。

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中村 大輝

中国現地企業で5年間勤務。HSK6級・中検準1級取得。文法の体系的整理とビジネス中国語の実践的な解説に強み。

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